はじめに
CCNP ENARSIをPING-Tで学習している際、AD値とメトリックに関する問題を間違えました。
AD値とメトリックはどちらも、ルーティングにおいて経路の優先順位を決める値という認識はありました。
しかし、問題を解いていると、
- AD値はどの経路と比較するのか
- メトリックはどの経路と比較するのか
を明確に説明できていないことに気付きました。
そこで今回は、AD値とメトリックの違いを整理したうえで、実際にCMLで値を変更し、ルーティングテーブルがどのように変化するのか検証してみます。
AD値とメトリックの違い
結論から言うと、AD値とメトリックの違いは比較対象です。
| 項目 | AD値 | メトリック |
|---|---|---|
| 比較対象 | 異なるルーティングプロトコル | 同じルーティングプロトコル |
| 目的 | どのルーティングプロトコルを採用するか決める | どの経路を採用するか決める |
簡単にまとめると、
AD値は「どのルーティングプロトコルの情報を優先するか」を決める値
メトリックは「同じルーティングプロトコル内で、どの経路を優先するか」を決める値
です。
どちらも小さい値が優先されます。
今回の検証内容
全ルータでOSPFを有効化。
RT1から2.2.2.2/32向けをAD値とメトリックによって経路を変更させる。

パラメータ
RT1
router ospf 1
interface lo0
ip address 1.1.1.1 255.255.255.255
ip ospf 1 area 0
interface ethernet0/0
ip address 192.168.1.1 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
interface ethernet0/1
ip address 192.168.2.1 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
interface ethernet0/2
ip address 192.168.5.1 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
RT2
router ospf 1
interface ethernet0/0
ip address 192.168.1.2 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
interface ethernet0/1
ip address 192.168.4.2 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
RT3
router ospf 1
interface ethernet0/0
ip address 192.168.3.2 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
interface ethernet0/1
ip address 192.168.2.2 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
RT4
router ospf 1
interface lo0
ip address 2.2.2.2 255.255.255.255
ip ospf 1 area 0
interface ethernet0/0
ip address 192.168.3.3 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
interface ethernet0/1
ip address 192.168.4.3 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
interface ethernet0/2
ip address 192.168.5.3 255.255.255.0
no shut
ip ospf 1 area 0
検証①:AD値の違いによるルーティングテーブルの変化
RT1の事前ルーティングテーブルを確認
show ip route

OSPFによって宛先ネットワークを学習しています。
- AD値:110
- メトリック:11
次に、同じ宛先ネットワークに対してStaticルートを設定します。

ip route 2.2.2.2 255.255.255.255 192.168.1.2
StaticルートのデフォルトAD値は1です。
そのため、OSPFのAD値110よりもStaticルートのAD値1が優先されます。
再度ルーティングテーブルを確認すると、OSPFの経路ではなくStaticルートが登録されます。
show ip route

この結果から、異なるルーティング情報源から同じ宛先への経路を学習した場合、AD値が小さい経路が優先されることを確認できます。
次に、設定したStaticルートを削除します。

no ip route 2.2.2.2 255.255.255.255 192.168.1.2
再度、ルーティングテーブルを確認します。
show ip route

Staticルートを削除すると、再びOSPFで学習した経路がルーティングテーブルに表示されました。
これは、Staticルートを設定していた間もOSPFによる経路情報が失われたわけではなく、AD値が低いStaticルートが優先されていたためです。
Staticルートを削除すると、同じ宛先ネットワークへの経路として利用できるOSPFルートが再びルーティングテーブルに登録されます。
検証②:メトリックを変更する
メトリックを変更しOSPFで学習しているルートを変更してみます。
事前のルーティングテーブル確認。
show ip route

ネクストホップはRT4。メトリックは11。
ほかの経路のメトリックを知るため、RT1のE0/2をシャットダウン。

ルーティングテーブル確認。

ネクストホップはRT2,3で等コストロードバランシングしています。メトリックは21。
RT1のE0/2を再度有効化。

メトリックが最小の経路RT1→RT4が再びルーティングテーブルに載ってきました。

ではRT1→RT4の経路のメトリックを22に変更してみましょう。
RT1のE0/2のコストを21に設定。

ルーティングテーブル確認。

RT1→RT4のメトリックが22になったことで、メトリック21のRT1→RT2,3→RT4の経路がルーティングテーブルに載りました。
OSPFのメトリック(Cost)の計算方法
OSPFでは、宛先ネットワークまでの経路上にある各ルーターの出力インターフェースのCostを合算した値が、経路のメトリックになります。
今回の構成では、RT1からRT4のLoopbackインターフェース(2.2.2.2/32)までのCostは以下のようになります。
RT1 → RT4
10 + 1 = 11
RT1 → RT4(コスト変更後)
21 + 1 = 22
RT1 → RT2 → RT4
10 + 10 + 1 = 21
RT1 → RT3 → RT4
10 + 10 + 1 = 21
まとめ
AD値とメトリックは、どちらもルーティングにおける経路選択に関係する値ですが、比較する対象が異なります。
AD値は、異なるルーティングプロトコルから同じ宛先への経路を学習した場合に、どのプロトコルを優先するか判断するための値です。
一方で、メトリックは、同じルーティングプロトコル内で複数の経路が存在する場合に、どの経路を優先するか判断するための値です。
今回の検証では、StaticルートとOSPFルートを比較することで、異なるルーティング情報源の経路選択ではAD値が使用されることを確認しました。
また、OSPF内で複数の経路を存在させ、Costを変更することで、同じルーティングプロトコル内ではメトリックによって最適経路が選択されることを確認しました。
CCNP ENARSIでは、AD値やメトリックの数値を暗記するだけではなく、「どの経路同士を比較するときに、どの値が使用されるのか」を理解することが重要だと感じました。
今回の検証を通して、AD値とメトリックは単純に優先順位を決めるための同じ種類の値ではなく、それぞれ異なる場面で使用される値であることを理解できました。


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